コラム

『金属は錆びる』

私たちは金属材料に囲まれて生活している。日常生活や医療活動も金属なしではもはや成り立たない。これらの金属製品は錆びないものが多い。しかしあらゆる金属は錆びる。すなわち腐食する。身近なものに鉄の赤錆や銅の青緑色の緑青がある。鉄は錆びると孔が空いたり、ボロボロに崩れたりする。「腐食」あるいは「腐蝕」は、「腐れて蝕まれる」といったネガティブなイメージで語られることが多い。

ステンレス、チタンなどは生体内材料として広く使われていることから、腐食しないと思われがちである。しかしステンレス鋼(鉄、クロム、〈ニッケル〉などの合金)は、表面にクロムが酸化(腐食)によってできた薄い強固な不働態被膜によって保護されるため、内部の金属自体は腐食を免れる。不働態被膜は傷がついても短時間で修復されて腐食が進行しないため、ナイフやフォーク、鍋などの食器のほか屋外の遊具、事務用品、医療器具などに広く使われ、独特の金属光沢を保っている。

ギリシャ神話の巨人タイタン(Titan )に因んで命名されたチタンあるいはチタン合金は、実用化されてまだ日が浅い非鉄金属で、軽量で優れた耐熱性、耐食性を有するため、航空機や宇宙分野のロケットなどの機体やエンジンなどに広く用いられている。表面に形成される不働態被膜はステンレス鋼よりも強く、電解質環境である生体内でも安定で、生体適合性も高いことから、人工関節や骨接合材料などの医療用インプラントとして多用されるようになった。これらの不働態被膜のようなポジティブな腐食もある。
次は錆びない鉄Stainless steelを取り上げる。
参考文献
1)天児民和:整形外科を育てた人達.医学書院,1999.
2)多田英司,西方篤:金属腐食のしくみ.科学と教育,65,2017.
3)吉村泰治:金属腐食の本.日刊工業新聞社,2022.

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