鉄が発見されたのは紀元前12世紀頃である。鉄は銅やアルミに比べて強度に優るため、様々に加工されて用途が広がった。18世紀から19世紀にかけて起こった産業革命で鉄鋼の生産が拡大し、産業の変革をもたらし急速に近代化が進んだ。
前号の「コラム」に書いたように、「金属は錆びる」。鉄の発見からその開発の歴史は、正しく「錆との闘い」の歴史である。
19世紀からCrと鉄の合金の研究が散発的に見られたが、実用化されるステンレス鋼の開発は1910年代である。大艦隊で世界の海を駆け巡っていた英国は、海水による艦や大砲などの錆に悩まされた。1913年英国のBrearlyがCr 13%を含む鉄の合金の製作に成功し、stainless steelと命名し、英米両国の特許を獲得した。しかし全く錆びない訳ではなく主にナイフやフォークなど食器に使われた。
ドイツでも錆びない兵器の開発が進行していた。Krupp製鉄所のMauerとStraussは、Cr 18%とNi 6%を含む、強い耐銹性の合金を開発し、1912年にV2Aの名称で市販した。主に火薬の容器や兵器に使われ、第一次世界大戦後日用品にも広く使われた。NiはCrの被膜の密着性を高める。
一方米国では、Johnsonが1922年にCr 18%とNi 8%を含む不銹鋼を開発し、18₋8 stainlessと命名した。Austenal研究所ではCo 65%、Cr 30%、Mo 5%を含む不銹鋼をVitalliumと名付けて特許を得た。この金属は非常に硬く、延性がないので工作が困難なため利用が遅れた。
その後多くの研究の結果、現在、約100種類のステンレス鋼が規定されている。
参考文献
1)天児民和:骨折用金属について.久留米医会誌,40,1977.
2)天児民和:整形外科を育てた人達.医学書院,1999.
3)浜中人士,米山隆之:防食技術,38,1989.
4)吉村泰治:金属腐食の本.日刊工業新聞社,2022.
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